発酵食品は、発酵の過程でカビや酵母、細菌などの微生物によって「旨味」や「香り」を生み出し、消化吸収を良くしたり、栄養成分を生み出したり、美味しくしてくれる素晴らしい食品で、現在は発酵食品の良さがとても見直されてきています。私達の腸の中は、数100兆個もの細菌が生息していて、まるでお花畑のようになっている腸内フローラを形成しているそうです。腸内フローラは、加齢や食生活、疲労やストレスによって日々変化し、善玉菌を増やすことが健康維持に為に大切と言われます。善玉菌を増やす為には、ヨーグルトや乳酸菌飲料、漬物、納豆、味噌、酒粕などの発酵食品と、善玉菌のエサになる食物繊維やオリゴ糖などを含む海藻、いも類、果実、野菜、大豆、きのこ類を一緒に摂取することが大切と言われています。
発酵食品の微生物の力が働かないと食品はカビが生えて、腐ってしまいます。しかし微生物の力が働くと、まろやかになり美味しくなります。とても不思議ですが、とても身近な発酵食品、おいしいと感じるのは、発酵過程で微生物が「旨味成分」や「香り成分」を生み出しているからです。
味噌や醤油、酒、ワイン、ビール、酢、ヨーグルト、チーズ、パン、納豆、ぬか漬け、生ハム、キムチ、鰹節、甘酒、塩麹、なれ寿司・・・
色々な発酵食品が世界中にあり、私達はその恵みを日々の食生活にうまく取り込むことで、豊かな食生活ができるだけでなく、栄養や健康面でとても助けてもらっています。
・醤油の発酵過程について
おいしい醤油になるまでには、長期に渡る大きく分けて3つの発酵過程を経て出来上がっていきます。湯浅醤油の濃い醤油は、熟成を早めたり、旨味調味料を入れたり、色を加えたりすることなく自然にまかせた熟成を経たほんものの醤油です。
1. 第一段階 : 麹菌による働き
蒸した大豆や茹でた大豆と炒り割り小麦(炒って挽き割った小麦)に麹菌(種麹)をつけて室(むろ)(湿度のある温かい部屋)に3日程かけて菌を繁殖させる。
醤油づくりに中で一番重要なもので、ここで出来上がったものを【醤油麹】と言います。質の良い麹ができると、質の良い酵素が生み出され、下記の2つの分解が行われます。
大豆のたんぱく質→アミノ酸に分解
小麦のでんぷん→ブドウ糖に分解
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【醤油麹】に塩水を合わせて仕込む→【諸味(もろみ)】
(湯浅醤油の場合は、大豆に煮汁に塩を入れた塩水を仕込み水に使って仕込む)
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2. 第二段階 : 乳酸菌による働き
麹菌の繁殖が塩水で仕込むことで止まるので、次は乳酸菌が活躍してきます。後の酵母菌の働きが活発になる前に、乳酸菌にしっかりと働いてもらうことで、醤油にさわやかな酸味や深みなどを生み出してくれます。乳酸発酵で【諸味(もろみ)】が弱酸性になることで、第三段階の酵母菌が活動しやすい環境になります。
3. 第三段階 : 酵母菌による2つの働き
1) 主発酵酵母により、でんぷんから分解されたブドウ糖がアルコール発酵します。
発酵過程で生み出されたアルコールは、乳酸菌がつくった有機酸と化学反応して複雑な香りを生み出します。酵母菌は温度が高くなると活発に活動します。
2) 後熟酵母がゆっくり活動して味に深みを与えます。この深みは、1年以上熟成させないと出てこないと言われています。
湯浅醤油の生一本黒豆や、樽仕込み醤油の深い味わいは熟成期間が長い為に生み出された自然の旨味です。 |