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フランスでしょうゆ造り 構想10年、新古さんの挑戦
どうだ!これが日本の調味料だ――。
そう話すのは、フランスのボルドーでワイン樽でのしょうゆ造りを始め、挑戦を続ける湯浅醤油㈲(湯浅町湯浅)の新古敏朗代表取締役(54)。
構想から約10年。日本人が関わり、BIO(オーガニック)認定を受けたフランス産の白しょうゆ「ブランシュ」が間もなく完成する。新古代表は「やっとここまできた。フランス人に味わってもらいたい」と目を輝かせる。
新古代表は明治創業の調味料メーカー、丸新本家㈱の五代目。しょうゆの国内消費量が減少の一途をたどる中、途絶えていた同社のしょうゆ醸造を復活させようと2002年、子会社の湯浅醤油を立ち上げた。
2014年、木樽で長期熟成させることにより香りや味わいが増す、ボルドーのワインの在り方に共感し、「同じ発酵食品であるしょうゆも進化させることで世界に知ってもらえるのでは」と、ワイン樽でしょうゆを造る挑戦を決めた。
2018、20年に現地で知り合ったワイン醸造家の内田修さんの醸造所の一角でしょうゆ造りを開始。手応えを感じ事業化したいと考えたが、新型コロナの拡大により、企画はストップしてしまう。その間に、新古代表の挑戦を知った、ワインを生産するシャトー・クーテットのオーナー、アドリアンが「一緒にやろう」と、事業パートナーとなり、ことし3月、サントテールでしょうゆ造りを始めることに。
まずは、黒しょうゆ(ノアール)と白しょうゆの2種類のしょうゆを仕込んだ。黒は、日本人にもなじみのある一般的な濃い口しょうゆのこと。白は、原材料に小麦が多く配合された色の薄いしょうゆ。黒しょうゆは、ボルドーの8大シャトーに数えられる、サンテミリオン1級シャトー・オーゾンヌのワイン樽に2500リットルを仕込んだ。白しょうゆはステンレス製のタンクに1300リットルを仕込んだ。
新古代表は、「色の薄い白しょうゆは、素材の色を引き立てながら味をつける。フランス料理に合うのでは」と可能性を感じているという。造り始めた3月は、毎日のようにトラブルが続いた。ボイラーからの出火や水漏れ、ヒーター、冷却ファンの故障など、「新品なのに動かない。考えられないことの連続だった」と振り返る。ヒーター故障では麹(こうじ)が冷たくなり発芽しなかった。「ぬくい麹をブースター代わりにして対処した。道具を手作りして、昭和初期の頃のようでトラブルも楽しんだ。仲間と一緒に経験したことで信頼関係も生まれた」と笑顔。
また、同しょうゆは、取得が難しいとされる、100%有機原材料によって生産された無添加オーガニックのBIO認定も受けている。新古代表は「挑戦する前は、できるわけがないと言われていたが、和歌山の田舎のおじさんでもできる。フランス産しょうゆをフランスの皆さんに知ってもらえたら」と話している。新古代表は26日に渡仏、白しょうゆの総仕上げを行い商品化する。黒しょうゆは約1年後に完成を予定している。
湯浅醤油で料理提供 ボルドー市内にレストラン
今年3月29日、ボルドー市内に、湯浅醤油㈲が運営するレストラン「PAVILLON YUASA~湯浅のはなれ~」がオープンした。湯浅しょうゆやもろみを使った和食が味わえる。シェフはボルドー在住で日本食を広めてきた山野純一さん。完成する白しょうゆも味わうことができる。
新古代表は、フランス料理は、ソース作りに時間をかけ、日本の発酵調味料は料理人の手元に渡るまでに何か月もかけてつくるといい、「食に対して追い求めていることが日本と似ているフランス人が、しょうゆのことを知れば評価はもらえると確信している」と期待する。すでに、同店はミシュランと並ぶフランス発祥のレストランガイド「ゴ・エ・ミヨ」にも評価され20点中13.5点を取得した。点が付くだけでもすごいことで、ボルドー市内に2800あるレストランの約10位、和食では1位に掲載されている。
新古代表は「ここを和歌山の情報発信基地にしたい。和歌山の調味料や食品をここでPRイベントもやっていきたい。目指すは、レストランで星一つ。フランス人が知っているしょうゆは『湯浅醤油』になってほしい」と話している。
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