750年の伝統胸に挑戦ラー油ともろみのコラボ「このもろみうまいジャン」、「カレー醤油(しょうゆ)」「具だくさん金山寺味噌」など次々に新商品を生み出している丸新本家。
日本の醤油発祥の地湯浅にある明治14年創業の同社を訪ね、5代目で丸新本家㈱専務取締役・湯浅醤油㈲代表取締役の新古敏朗さん(41)に話を聞いた。

「世界一の醤油を」「お客さんに喜んでもらえるものを」と挑戦し続ける根底にあるのは、”伝統”と”地元”への熱い思いだった。

見据えるのは「世界」と「地元」
公開している九曜蔵に入るとほのかに醤油の香り。
「もろみ」(※1)をねかせ発酵・醸成させる樽(たる)が12並ぶ。
直径は約2㍍で容量は1樽約6000㍑。
撹拌(かくはん)を重ねながら1年半から2年間ねかせると、醤油特有の色・味・香りが生まれるという。
扱いやすいステンレス樽が増える中、同社は伝統的な杉樽にこだわる。
杉樽は200年持ち、同蔵にはすでに130年使っている樽も。
しかし今、大きな樽を作れる職人は減少し、長い竹を6つ編みにして杉板を締める「口輪」などを作る伝統技術もなくなりそうだと、敏朗さんはちょっと憂い顔だ。
丸新本家といえば、モンドセレクション最高金賞を連続受賞し、ヨーロッパのミシュランシェフも買いに来る「生一本黒豆醤油」が有名だが、実は同社は長い間、醤油作りをやめていたという。
復活させたのは、”醤油発祥の地・湯浅”の伝統の重みに驚いた敏朗さん。

750年前の”醤油の起源”(※2)、金山寺たまりを使った唯一の醤油「九曜むらさき」を開発し、こちらも最高金賞を受賞している。

代々、合成保存料や着色料は使わず原料・製法・味にこだわってきた。
大豆や米、塩、梅、「ユズ、砂糖も国産や地元産だ。
安全安心だけでなく、地元との連携を大切にする。
近隣のあめ屋や牧場とのコラボ商品「しょうゆ飴」や「醤油アイスクリーム」もあり、地元の小学校では児童に「マイ醤油造り」をボランティア指導する。
往時は湯浅に90軒あったという醤油屋は今は4軒のみ。
「先人が築き上げてきた醤油づくり、その後ろで息づく伝統技術、思いや意志を伝えていきたい」「未来を担う子どもたちや湯浅の町に、醤油の文化を通していろんな形で貢献していきたい」と敏朗さんは語っている。

※1【もろみ】蒸した大豆と炒った小麦を混ぜ、種麹(たねこうじ)を加えてつくった麹を、食塩水と仕込んだもの。

※2【醤油の起源】鎌倉時代の1254年ごろ、由良の禅寺「興国寺」の開祖、法燈円明国師(ほうとうえんめいこくし)が、中国(南宋)の径山寺(さんざんじ)の金(径)山寺味噌を持ち帰ったのが始まり。

金山寺味噌は健康食として広まった。
その醸造過程でおけの上に出てくる野菜の水分(溜まり)を、調味料として改良したのが醤油の起源といわれる。

【丸新本家】湯浅町湯浅 11種類の醤油、9種類の金山寺味噌、6種類の味噌、4種類の梅干し。
ほか、ゆずぽん酢や柚子梅つゆ、梅マヨネーズ、紅生姜、らっきょう、黒豆じゃん、ゆずジュース、ジャム、大豆手づくり石鹸(せっけん)などなど、商品の多彩さは驚き。

九曜蔵には年間5~7万人が訪れ、台湾や韓国、シンガポールからなども多い。
見学の予約・・問い合わせは(TEL0737・62・2100)

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