レストランを評価付けする「ミシュランガイド」で星を獲得したベルギーのシェフ3人が、「熊野牛」や「近大マグロ」といった県内の食材を使った料理を8月に和歌山市で披露する。イベントのきっかけになったのは、湯浅で生まれた一本のしょうゆだった。(黒川真里会)
イベントは8月14日、和歌山市毛見の結婚式場「ベイサイド迎賓館」で開催される。腕をふるうシェフは、「ミシュランガイド」の今年度版で二つ星や一つ星を獲得した3人。県内の生産者やシェフら50人程度の招待客が見守る中、各シェフがそれぞれ県産食材を使った料理を作る「料理ショー」だ。
シェフたちが和歌山に来るきっかけとなったのは、湯浅町湯浅の「湯浅醤油(しょうゆ)」の製品「生一本黒豆しょうゆ」。今回来日するシェフ、ディミトリーさんが「本場のしょうゆの味を知りたい」と知人を通じて大阪市内の百貨店で売られていたしょうゆを買い取り、「一番おいしい」と太鼓判を押したのが「生一本……」だった。
ディミトリーさんはこのしょうゆにすっかりほれ込み、「現場を見たい」と2007年7月に湯浅町に蔵の見学に訪れたほど。今では湯浅醤油と直接取引しており、ベルギー国内ではほかにも約20人のシェフが「生一本……」を使っているという。
ベルギーを訪ねて実際にこれらの店を食べ歩いた湯浅醤油の新古敏朗社長(41)は、シェフたちの全く新しいしょうゆの使い方に驚いたという。香りを生かしたり、色づけに加えたり、時にはデザートにも使ったりしている。
今回のイベントは、新古社長がシェフたちと来日の計画を打ち合わせする中で生まれた。和歌山が誇る様々な食材を知ってもらおうと話を進めるうち、先方から「料理を披露したい」という申し出があった。
「地元に眠った食材を、全国にPRしよう」。食の専門家である「フードアナリスト」の資格を持つ社長の妻祐子さん(37)や、「野菜ソムリエ」、シェフらが昨年11月に実行委員会を立ち上げた。メーン食材に熊野牛と近大マグロを選び、さらに30種類以上の食材を県内各地で探している。
祐子さんは「食材がどのように生まれ変わるか知ってもらうことで、生産者の自信につなげ、全国に和歌山の豊富な食材をPRしたい」と話す。
イベントは招待客向けだが、当日は一般客向けに、イベントで使った食材の販売会も企画している。